大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)703号 判決

控訴人は昭和二十二年五月中石井武雄から右宅地の中原判決添付の別紙図面記載のように、A、B、C、D、Aの各点を順次に結んだ直線で囲まれた範囲内の部分六十坪五合を単独で賃借した旨主張し、被控訴人は、石井武雄から控訴人が右宅地の一部を借受けていることは認めるが、その借地の範囲は右のようにはつきり定められていることは否認すると主張するから判断する。右宅地について控訴人主張のように南部と北部に二等分する境界線を設けると、本件宅地上にある後記建物の、被控訴人所有部分の廊下の半分以上並びに玄関の大部分が控訴人の借地内に、又控訴人所有部分の階段の半分以上が被控訴人の宅地内に、それぞれ突き出し合うという関係にあることは当事者間に争がない。……を綜合すれば下記の事実を認めることができる。すなわち、石井武雄は昭和十年八月一日訴外飯田東吉に対し右宅地百二十一坪三勺を普通建物所有の目的で賃貸していたが、飯田東吉は右宅地上に木造瓦葺二階建アパート建坪三十一坪二合五勺外二階二十三坪四合六勺を所有しており、控訴人と被控訴人は共に右アパートの一部を賃借して居住していたが、被控訴人は昭和二十二年四月十八日右アパートを飯田東吉から買受けた。被控訴人は同年五月十三日右アパートを分割し、分筆した上、その一部建坪八坪五合外二階八坪五合を控訴人に譲渡したが、控訴人と被控訴人は共に地主である石井武雄を訪れ、本件宅地を従前通り借受けることの承諾を得た(飯田東吉の賃借権を譲り受けたのか新に賃貸借契約を結んだかはしばらくおく)。右のような経緯で、控訴人と被控訴人の所有家屋は元々一箇の建物であつて、同一人が所有していた関係上、本件宅地を南北に直線で二等分すれば、上記認定のように双方の所有家屋の一部がそれぞれ相手方の土地にまたがつている関係にあるばかりではなく、控訴人の一家は被控訴人の便所を使用し、被控訴人の一家は控訴人の敷地を通つて出入しているような錯雑した関係にあるので、石井武雄は控訴人と被控訴人の両名に本件宅地を貸与したさい本件宅地に境界線を設けて二分するようなことをなさず、従前通り双方で円満に互譲し合つて使用し、相互に相手方の本件宅地の使用についての権利を侵害しないようにして本件宅地を使用し、賃料の関係においては半分ずつ支払うということを右三名の間にて約し、控訴人と被控訴人の双方から実質的には権利金として夫々金千二百十円を受領し、双方に宛名以外は全く同じ受取証(乙第五号証と甲第四号証―但し右金額の下の但し書の部分を除く)を双方に交付した。その後控訴人と被控訴人とは円満に地主との間も地代を価上して被控訴人の分が多少高額となつたが、別に問題を起すことなく、双方で本件宅地を従前通り使用しており、ことに、控訴人は昭和二十三年中に被控訴人が南部と北部とに二等分の線を超えてその所有家屋の台所の増築工事をなしたことについても承認していた(この事実は当事者間に争がない)。控訴人はその後(日時は不明なるが昭和二十四年秋前)その父の石原淳を代理人として石井武雄に交渉して控訴人の借受けている部分を明確にさせようと交渉して、石井武雄に上記甲第四号証の金額の記載の下に「但し百二十坪ヲ南北××直線ニ××其一部トス」(当審での鑑定人町田欣一の鑑定の結果によつても右××の部分は判読できない)と記入させ、現実に控訴人と被控訴人において南部と北部とに二等分した場合に、境界線を超える建物部分についてどうするかとの点等についてはなんら取きめをすることなく、将来被控訴人の了解を得て、控訴人と被控訴人との双方に支障のないように南部と北部とに二等分する協定ができれば、二等分して賃貸するという趣旨の了解を与えた。石井武雄は本件宅地と建物との状況が上記認定のような錯雑なものなので、その趣旨を被控訴人に話すことなく、その後控訴人と被控訴人との間に本件宅地の使用について紛争を生じたさいに、仲に入つて円満に解決させようと努力したが、ついに解決ができなかつたので、控訴人と被控訴人に対する本件宅地の貸借契約も当初のままにして別に改めなかつた。石井武雄は昭和二十五年十月十二日上記認定のように本件宅地全部を被控訴人に譲渡した。その後控訴人と被控訴人との間に本件宅地の使用方法について紛争を重ねているが、ついに今日にいたるまで解決をみるに至つていない。右諸認定に反する原審証人伊藤憲助、原審(第一、二回)と当審証人石井武雄、原審と当審(第一、二回)証人石原淳の各証言及び原審での控訴人本人尋問の結果は上掲各証拠に照し合わせて信用ができないし、外に上記諸認定を覆して、控訴人主張のような事実を認めることのできるなんの証拠もない。

そうだとすれば、控訴人の本件宅地に対する賃借権は、上記認定のように、本件宅地上に存する所有建物について登記が存しているから、本件宅地の所有権をその後に取得した被控訴人に対抗し得るものであり、上記認定のように南部と北部に二等分するという特約も、被控訴人に対し効力を有するものと解すべきである。しかしながら右特約は上記認定のように、被控訴人と南部と北部とに二等分することについて充分な了解がついた場合においてのみ、なすとの趣旨であつたのに、控訴人は被控訴人との間に右のような了解を得たことについてはなんの主張も立証もしない。故に、控訴人はまだ本件土地についてその主張のように南部と北部とに二等分した宅地に対して賃借権を有しているとは認められないのであるから、これが確認を求める控訴人の本訴請求はその他の点について判断をするまでもなく理由がない。

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